ラ・フォル・ジュルネのプロデューサーが語る「いい音楽をシェアする」こと

日本では恒例行事になったクラシック音楽の一大イベント「ラ・フォル・ジュルネ」(熱狂の日)の生みの親である総合プロデューサーはフランス人のルネ・マルタンさん。この方の講演を私は以前見たことがあり、大変感銘を受けました。その時のマルタンさんの語録を紹介します。

「いい音楽をシェアする」…まさに、私もかかわる音楽交流会MTSのコンセプトにもぴったりだと思います。

【マルタンさんの語録】(一部補足)
「僕自身、クラシック音楽マニアだけど、それにまして“シェアする”という考え方がとても好きでね。すべての人と音楽を分かち合いたい。毎回、音楽祭テーマを決めるわけだけど、初心者もファンも、もちろんアーティストも巻き込めるように、多くの方向性を引き出すよう心がけているんだ。『もし参加してくれるなら、僕に任せて下さい。僕から感染したウィルスがあなたをクラシック好きにます!』という感じかな。」

(クラシック離れの若者や、就学前の子どもたち等に向けて)
「生まれ立ての赤ちゃんにも、聴覚の喜びがある。そして幼ければ幼いほど、情報を吸収する能力があるのに、多くは与えられていない。彼らがまったく体験したことのないダイナミズムの空間大音響と静寂を知ることは、“他者を聴く”すばらしい教室になるはずだ。」

(マルタンさんは、故郷ナント近郊の野外パーティーで、ジャズありロックありのダンス音楽を任されたのが今の活動の原点。17歳のときにはあるジャズマンに夢中になり、その人が聴いていたクラシックの弦楽四重奏曲のレコードを買った時に衝撃を受けたという。)
「まるでジョン・コルトレーンやフリージャズのようで、不協和音にはまったく違和感がなかった。その旋律が、体にズシンときたんだ。」

(マルタンさんはジャンルを問わず、音楽を愛聴している)
「何かを成功させるときは、互いを認めあわなければならない。どんな専門家だって、世界のすべてを知っているわけじゃないからね。ルネサンス音楽の専門家を自宅に招いたとき、ワインを開け、ルネサンス以外すべての音楽をかけたんだ。すると、彼は『書くものあるかな』と言う。いい曲だからメモしたいと。嬉しいね。音楽が本当に好きな人は、ジャンルが違っても一流のものを分かってくれる。だからこそ僕は“シェア”するんだ。」